今回は、スピーチやプレゼンの冒頭の話し方について解説していきます。
導入部分は、全体の中でも最も話すのが難しいと感じやすい部分だと思います。
ただ、自分に合う冒頭の話し方が見つかると、自信をもって話し始められます。
今回は、プレゼンにおける冒頭の基本要素の解説をしたうえで、その組み合わせによるパターンの事例をご紹介するので、ぜひ参考にしてみて下さい。
今日は、プレゼンの冒頭の話し方を解説します!
この記事は、こんな方におすすめです。
✓プレゼンの導入の話し方を知りたい方
✓プレゼンの冒頭で緊張しやすい方
✓自信を持って話せるようになりたい方
✓プレゼン冒頭でテーマの提示方法を工夫したい方
✓プレゼンの導入部分でお悩みの方
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スピーチやプレゼンの導入に含める要素
まず最初に、スピーチやプレゼンの冒頭に含まれる主な要素を確認していきましょう。
※ここでは、冒頭部分をできる限り単純化して考えます。
応用の話し方や、より複雑なプラスアルファの部分は、別の記事で解説します。
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プレゼンの導入に含める要素
プレゼンの冒頭を構成する主な要素として、以下のようなものがあります。
当サイトでは、話し手がプレゼン中に言及できる内容を大きく3~5種類に分け、スポットライトのイメージで捉えることをおすすめしていますが、
これらの要素は、ある程度その分類に対応しています。
※参考記事
要素⓪挨拶(G)
要素①話し手自身への言及(I)
要素②テーマの提示(T)
要素③全体像の提示(O)
要素④聞き手への言及(L)
これらの要素は、毎回必ずすべて含める必要がある訳ではありません。
また順番はある程度自由に変えられるものと考えて下さい。
例えば、これらの要素の組み合わせとして
全部使うパターン(要素⓪+①+②+③+④)
一部使うパターン(要素⓪+②+④)
別順序のバターン(要素②+①+④+②)
このように様々なパターンが考えられます。
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5要素の解説
では、上記の各要素について、詳細を確認していきましょう。
要素⓪挨拶
最初の要素は、挨拶(Greeting)です。
これは一言で終わる短い要素なので、難しくないですね。
「みなさん、こんにちは。〇〇です」というだけの部分です。
※この要素は、ほかの要素と同様プレゼンの場面・状況によっては無くてもOKです。
挨拶の部分にプラスアルファの要素を加えるとしたら、アイスブレイクが挙げられます。
冒頭で少し笑いを入れ、場を和ませてから話し始めたいシーンもあると思います。
アイスブレイクの方法は、話し手のエピソードトーク、聞き手への言及(質問)など、様々なやり方がありますがこれについては別の記事でまとめたいと思います。
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要素①話し手への言及
次の要素は、話し手(あなた)自身への言及です。
※「私」のことを話すため、記号として(Ⅰ)を用いています。
ここでは話し手自身への言及を、大きく2種類に分けて考えます。
①自己紹介…話し手に関する基本情報などを伝える
②エピソード…話し手に関するストーリーを話す
◆自己紹介
自己紹介は、プレゼン中に行う頻度が高い、かなり重要なファクターです。
「自己紹介は苦手だな…」
「自己紹介で何を話せばいいか分からない…」
過去にこのように感じた経験をお持ちかもしれません。
自己紹介を得意にするために最も重要なのは、「自己理解の深さ」だと言えます。
というのは、「自分を深く知ること」ができると、その都度の状況に応じて、
自分の中からどんな情報を抽出して、何を聞き手に伝えればいいかわかるからです。
自己理解を深められれば、自己紹介の苦手意識を払拭することができます。
以下の記事で、「自己理解を深める」というテーマを扱っています。
またこちらの記事では、自己紹介の考え方&パターンを紹介しているので、ご参考下さい。→プレゼンにおける自己紹介のポイントを分かりやすく解説!
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◆ストーリー
もう一つ、自分自身について話すパターンとして、話し手のエピソード・トークをする方法があります。
このストーリー形式の話し方も、プレゼンではかなり重要なスキルです。
過去のエピソードを話すことで、聞き手の信頼・共感を得ることができたり、プレゼンの結論・メッセージ部分に繋げて説得力を持たせることもできます。
こちらの記事で、過去のエピソードの話し方をステップ形式で解説しているので、ご参考下さい。
→【5ステップ解説】プレゼンにおける過去のエピソードの話し方
要素②テーマの提示
第3の要素は、テーマ(Theme)の提示です。
プレゼンでは、殆どの場合、本題に入る前にメインテーマを提示します。
典型的なのは、こういう表現ですね。
今日は、〇〇〇のテーマについて、お話しします。
これも誰もが自然と使っているものなので、特段難しい点はないと思います。
ただ、テーマの提示をするとき押さえてほしいポイントが2つあるので、ご紹介します。
◆ポイント①テーマを提示する順番
テーマの提示の方法は、順序の違いによって次の2つがあります。
①前置パターン…先にテーマを提示する方法
②後置パターン…後にテーマを提示する方法
この前置パターンと後置パターンを使い分けられると、プレゼンの冒頭部分の話し方のヴァリエーションが一気に広がります。
この点については、こちらの記事をご参考下さい。
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◆ポイント②理由付け
第二のポイントは、理由付けです。
プレゼンのテーマを提示するとき、必ずセットで「なぜ、そのテーマは重要だと言えるのか?」という理由を説明することがとても重要です。
これを理由付けと言います。
話し手が前提としていることが、予め聞き手に共有されていれば割愛できることがありますが、
聞き手の人々が、プレゼンで話すテーマに殆ど精通していないケースもありますよね。
こういう場合には、そのテーマについて考えることの重要性(正当性)を説明する必要があります。
例えば、コーチング業に携わる人が、自身のセミナーのなかで、次のようなテーマを提示したとします。
今日は、この社会の中で「強力なリーダーシップを発揮する方法」についてお話ししたいと思います。
このとき、話し手は自分が提示したテーマについて、
「なぜ、そのテーマは重要であると言えるのか?」
という部分を聞き手に説明し、明らかにする必要があります。
このケースでいえば、なぜ「リーダーシップ」は重要なのか、解説するということですね。
例えば、リーダーシップの考え方を学ぶことで、
・他人や社会に大きな影響を与えられる
・家庭や職場のコミュニケーションが活発になる
・組織内の問題解決の力がアップする
このような理由が挙げられるかもしれません。
また例えば、起業家がこのようにテーマを提示したらどうでしょうか。
今日は、優れたマーケティングの考え方を実際のビジネスに応用し成果を上げる方法についてお話します。
この場合、
・売り上げを得るための機会損失をなくす
・より効果的な集客やセールスの方法を学べる
・より多くの人にサービスを提供し、人生の変化に貢献することができる
このような理由を挙げられるかもしれません。
この理由付けは、聞き手の属性や知識の広さ、理解の深さによっても変わりますが、上手に説明することができれば、集中して話を聞いてもらうことができます。
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要素③全体像の提示
要素③は、プレゼンの全体像(Overview)の提示です。
これは要素②テーマの提示と密接に関係しますが、重要な要素なので独立させました。
特に講義形式で話をしたり、ある程度長く人前で話す場合は、冒頭でプレゼンの全体像の提示を行って下さい。
このとき重要なのが、ガバニング(数的統制)です。
ガバニングとは、具体的な数字を用いて、話し手がこれから喋る内容の構造を予告することです。
例えば、こういう表現ですね。
この文章を解釈するうえで大事なポイントは、3つあります。
この数字を提示することで、聞き手は新しい知識や情報を聞いたとき、スムーズに理解しやすくなります。
ガバニングを通じて全体像を伝えるときは、必ず具体的な数字を挙げ、
聞き手に「地図(マップ)を手渡す」イメージで、
あなたは何のテーマについて話すのか?
聞き手は具体的にどんな情報を得られるのか?
各テーマや情報は、どんな関係性にあるのか?
これらの構造を分かりやすく伝えることを意識します。
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要素④聞き手への言及
最後の要素は、聞き手(Listener)への言及です。
この言及の仕方には、質問・推測・指示などがあります。
◆事例
質問:皆さんは、〇〇〇という言葉を聞いたことがありますか?
推測:皆さんも、□□□で悩んだ経験をお持ちかもしれません。
指示:筆記用具を用意し、メモをとりながら話を聞いて下さい。
これは聞き手に言及するときの代表的な事例ですが、
このような感じでプレゼンの冒頭で聞き手に語り掛けるとき、
とても重要になるのが接続(リンク)という考え方です。
例えば、私(馬渕)がこんな風にテーマを提示したとします。
今日は、人間が持つ最も高次の知的能力である、メタ認知の重要性について、お話ししたいと思います。
このように抽象的なテーマについて話す場合、何も策を講じないと
これは僕には関係なさそうだな…
これ、私と何の関係があるのだろう?
聞き手はこのように感じ、興味を持ってくれない可能性があります。
このままだと、話し手が扱うテーマが、聞き手にとってフワッと宙に浮いたままになってしまいます。
そこで、こうしたテーマについてプレゼンを行うときには、聞き手がもつニーズや価値観に、何らかの形で接続(リンク)する必要があります。
この接続(リンク)を丁寧に行い、聞き手との間に強固な結び目を作れると、プレゼンの内容を集中して聞いてもらうことができます。
聞き手のニーズを満たすことで、最終的には、円環を描くように話し手(あなた)が欲していることを得ることに繋がるため、
まずは聞き手の立場に立ってどんなメリットがあるかを明確にすることを意識します。
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プレゼン冒頭の例文
では、これまでの話を踏まえて、プレゼン冒頭の事例を確認していきましょう。
以下の事例のテーマは、次の通りです。
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◆事例1.時間管理の重要性
◆事例2.環境保護の重要性
◆事例3.リモートワークのメリット
◆事例4.健康的な生活習慣
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事例1.
◆事例1.時間管理の重要性
◆挨拶(G):
「みなさん、こんにちは。今日はお集まりいただきありがとうございます。
◆話し手への言及(I)
私は田中と申します。私はこれまでに10年以上、プロジェクトマネージャーとしての経験を積んできました。
◆テーマの提示(T)
今日は、時間管理の重要性とその方法について、皆さんに共有したいと思います。
◆全体像の提示(O)
具体的には、時間管理がどのように生産性を向上させ、ストレスを減少させるかについて、3つのポイントに分けてご紹介します。
◆聞き手への言及(L)
皆さんの中には、日々の業務に追われて時間が足りないと感じることが多い方もいるのではないでしょうか?
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事例2.
◆事例2.環境保護の重要性
◆挨拶(G):
みなさん、こんにちは。
◆テーマの提示(T):
今日は環境保護というテーマについてお話しさせていただきます。
◆話し手への言及(I)
3年前、家族でハイキングに行った際、山々がゴミで汚れているのを見て、強いショックを受けました。
◆聞き手への言及(L)
皆さんも、自然環境が私たちの日常生活に与える影響について考えたことはありますか?
◆全体像の提示(O)
このプレゼンでは、環境保護の必要性を3つの視点から説明します。まず、現在の環境問題の現状を把握し、その後個人でできる具体的なアクションについて考え、最後に私たちの未来への影響についてお話しします。
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事例3.
◆事例3.リモートワークのメリット
◆挨拶(G)
こんにちは、私は鈴木と申します。
◆テーマの提示(T)
リモートワークのメリットについてお話ししたいと思います。
◆全体像の提示(O)
このプレゼンでは、リモートワークが生産性、ワークライフバランス、コスト削減にどのように寄与するかについて、3つのセクションに分けてご紹介します。
◆聞き手への言及(L)
皆さんも、リモートワークを経験したことがあると思いますが、その利点と課題についてどのように感じているでしょうか?
◆話し手への言及(I)
IT業界で15年以上の経験を持ち、現在はリモートワークのコンサルタントとして活動しています。
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事例4.
◆事例4.健康的な生活習慣
◆挨拶(G)
こんにちは、皆さん。
◆テーマの提示(T)
今日は、健康的な生活習慣です。
◆話し手への言及(I)
私はこれまでフィットネストレーナーとして10年間、多くの方々の健康維持をサポートしてきました。
◆聞き手への言及(L)
普段の生活の中で、体調の変化やストレスを感じることがきっとあると思います。
◆全体像の提示(O)
このプレゼンでは、健康的な生活習慣を3つの観点から見ていきます。まず最初に、適切な食事のとり方。その次に、効果的な運動方法。最後に、メンタルヘルスの重要性について考えます。
プレゼンの冒頭、応用編
今回ご紹介した冒頭の話し方はとても基本的なもので、かなりコンパクトにまとめてあります。
この基本に加えて、さらに自由度の高い話し方をする方法として、「導入法」というものがあります。
この導入法の考え方を取り入れると、プレゼンの冒頭で話せる幅が広がり、さらに自由度の高い話し方ができるようになります。
この応用部分である導入法については、別の記事で解説します。
【応用編】プレゼンの冒頭の話し方│導入法を解説
→ coming soon
最後に
この記事の内容は、基本的なものに限定しているため、このように整理しなくても最初から話せる方も多いかもしれません。
ただ、プレゼンの冒頭は「これで大丈夫かな…」と不安を感じやすい部分なので、
もし冒頭でどんな風に話し始めたらいいか分からないと感じたら読み返してもらえたらと思います。
少しでもご参考になれば嬉しいです。
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