今回は、プレゼンの構成や話し方の流れを理解するうえで大事な「スポットライト理論」という考え方をご紹介します。
これまで、学校で発表を行ったり、会社でプレゼンを行うときなどに、
「人前でもっと上手に話せたらいいのに…」
「なぜ、自分は言語化が苦手なんだろう」
「どんな構成でプレゼンを進めたらいいだろう?」
このように悩んだ経験をお持ちではないでしょうか。
こうした悩みや課題をクリアし、人前で話す力を高めるうえで、スポットライト理論はとても有効です。
この考え方を学ぶことで、短期間でプレゼンの能力を高められるようになるので、ぜひご参考ください。
今日は、プレゼンを効率的に上達するための「スポットライト理論」を解説します!
この記事は、こんな方におすすめです。
✓短期間で話す力を高めたい方
✓プレゼンの基本の構成を知りたい方
✓人前で自信をもって話せるようになりたい方
✓プレゼンの質(クオリティ)を高めたい方
✓プレゼンテーションの自由度を高めたい方
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スポットライト理論とは?
スポットライト理論は、プレゼンの中で話し手が言及する内容(対象)を分かりやすく整理・分類するための考え方です。
スポットライト理論では、
(会話やプレゼンのなかで使われるような)あらゆる言葉・文章表現には、特定の対象に光(スポットライト)を当て照らし出す機能があると考えます。
プレゼン内で使われる文章(テキスト)は、
①プレゼンを行う話し手、②その話に耳を傾ける聞き手、③プレゼンで扱われる主要なテーマ、④プレゼンが行われる会場のような周囲の環境・状況など、
特定の対象に光(スポットライト)を当て、その対象はプレゼンが進行するなかで次々と切り替わっていきます。
このように言葉や文章にたいして光のイメージを持つことによって、
プレゼンの構造を深く理解したり、実際に人前で話す力を高めることができます。
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具体的な事例
会話やプレゼンにおける「言葉や文章(テキスト)は、スポットライトのように対象を光で照らしだす」と言いましたが、
これはどういう意味なのか、具体的な事例で確認していきましょう。
ここではケーススタディーとして、精神科医が「うつ病の治療法」についてプレゼンを行うシーンを考えてみたいと思います。
次のスピーチ原稿を少し時間をとって読んでみて下さい。
※原稿は架空のものです。
※敢えて改行などせずに書いているので、少し読み難さを感じるかもしれません。
…皆様、はじめまして。只今ご紹介に預かりました、田中悟史(仮)と申します。私は普段、都内で精神科医として働いており、これまで20年以上に及ぶ臨床経験を通じて、多くの患者様と向き合ってきました。本日は、現代社会でますます重要性を増している「うつ病」の最新の治療法について、皆様にシェアしたいと思います。うつ病は多くの方が直面する深刻な問題であり、最新の治療法についての理解は非常に重要です。今日は、お集まりいただいた約200名の皆様に心から感謝申し上げます。この大きな会場で皆様とお会いできることを光栄に思います。遠方からお越しの方もいらっしゃり、その熱意に感謝しております。うつ病は、現代日本では数百万もの人々が抱える重大な病であり、この病に対する理解と治療法の進化は、患者さんの生活の質に深く関係しています。さて、皆さんは精神疾患の神経学的なメカニズムについてどの程度ご存じでしょうか。普段から精神疾患についての書籍を読んだり、研究に興味を持っておられる方がいらっしゃいましたら、どうぞ挙手して教えてください。
この原稿(スクリプト)は、そのままではただの文章の羅列になっていて、少し読み難いですよね。
もしこの原稿を「丸暗記」しなさいと言われたら、少し大変ではないでしょうか。
この原稿が読みにくいのは、一見しただけでは「構造」がよく分からないからです。
そこでもう一度、このテキスト全体を、今度は各文章のなかで一体どこに光(スポットライト)が当たっているのか(焦点)を意識しながら読んでみて下さい。
このスポットライト理論の考え方を用いると、この原稿を次のように整理することができます。
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いかがでしょうか。
ここで確認していただきたいのが、このケースでは、スポットライトが当たる(言及される)対象が、
①話し手→②主要テーマ→③環境・状況→④主要テーマ→⑤聞き手
このように切り替わっていくことです。
自己紹介の部分では → 話し手に
テーマを提示するときは → 主要テーマ(うつ病)に
スピーチ会場の話をする時→ 周囲の環境・状況に
聴衆に質問をする部分では→ 聞き手へと
このように言及される対象・内容が変遷してますよね。
スポットライト理論では、このように、
スピーチやプレゼンで話されるあらゆる言葉や文章(テキスト)は、特定の対象に光(スポットライト)を当て照らし出すものとイメージします。
そして、そのスポットライトで照らされる対象は、プレゼンが進行するなかで次々と切り替わっていくのです。
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スポットライト理論の2つの目的とは?
スポットライト理論では、大きく分けて次の2つの点を目標にします。
①プレゼンの構成を理解する
②話し方のパターンを増やす
まず一つが、プレゼンの構成を理解しやすくすること。
もう一つが、プレゼンの構成を理解したうえで、話し方のパターンを増やすことです。
この①と②について、順番に確認していきましょう。
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プレゼンの構成を理解する
プレゼンは、人前で話す行為であると同時に、口頭で大量の知識や情報を扱う技術としての側面があります。
プレゼンでは、3~5分程度の短時間話すこともあれば、10~20分程度の中時間だけ与えられることもあれば、2~4時間程度の長時間壇上に上がることもあります。
話し手に与えられた時間が長くなるほど、情報量は増えてきますが、
もしその大量の情報を、機械のように「丸暗記」したり、固定的なセリフのように話そうとしてしまうと、最後までスムーズに喋ることがとても難しくなってしまいます。
そこでまず最初に必要になるのが、プレゼンの基本構造を理解することです。
プレゼンの時間がどれくらいの長さであっても、
私たち話し手(プレゼンター)が言及する内容は、たった3~5種類ほどに分類することができます。
この3~5種類の対象を、光のイメージによって捉えると、プレゼンの構造がハッキリと見えるようになり、一気に話しやすさが増すのです。
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以下の図は、当サイトで紹介している、プレゼンの基本構造です。
縦の列の色分けは、話し手が言及する内容を表していますが、
たった3種類(ベージュ、レッド、ブルー)しかないですよね。
シンプルに構造化すれば3種類ほどで済みますし、多くても5種類ほどで捉えることができます。
※もちろん、この分類の数は、あなたにとってしっくりくるものを選んでもらえればOKです。
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話し手がプレゼン内で言及できる主な対象を、ここでは5種類挙げていくので、順番に確認していきましょう。
最初は、シンプルに3種類で捉え、慣れてきたら4~5種類に増やしてみてください。
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話し手自身
第一の対象は、話し手(あなた)自身です。
例えば、プレゼンの冒頭で自己紹介をするとき、自分の名前や職業、経歴や専門など伝えることがありますが、
このときスポットライトは話し手自身に当たることになります。
また自身の過去のエピソードを話したり、聞き手に自分のミッションを話すときも、話し手自身に焦点が当たると考えられます。
具体的なセリフの例として、このようなものが考えられます。
◆事例
「私は15年以上、視覚表現を駆使したメディアアートの制作に携わってきました。私の作品の核には、テクノロジーと人間の融合というテーマがあり、観客に新しい視点を提供し、インタラクティブな体験を提供することを重要視しています。」
「私は10年以上、ファッションデザインの世界で活動しています。私は仕事の中で、美しさと持続可能性の両立を大事にしています。日常の美しさを追求しつつも、環境に配慮した素材と工程を使ったファッションを提案しています。私のライフワークは、人々が自分らしく輝くための服作りを通じ、自信と個性を表現することをサポートすることです。」
聞き手
プレゼン中では、聞き手に質問を投げ掛けたり、語り掛けることがあります。
この瞬間、スポットライトは聞き手に当たっています。
例えば、プレゼンのテーマが「哲学」とか「コミュニケーション」である場合、聞き手に対してこのような質問や語り掛けが考えられるかもしれません。
◆事例
皆さんは、西洋哲学の古典的な著作を読んだことはありますか?
皆さんの中にも、一対一の会話は特に問題ないけれど、集団のなかでコミュニケーションをとるのが苦手だと感じている方がいるかもしれません。
このようにスポットライトを切り替え、聞き手に対する質問や語り掛けのパターンを持つことも、話し方の自由度を高めるうえで効果的です。
主要テーマ
スポットライトが当たる対象を、「話し手」と「聞き手」から紹介しましたが、
プレゼンにおいてメインで言及され、焦点が当てられ続けるのは、勿論そのプレゼンの「主要テーマ」です。
例えば、話し手がうつ病(精神疾患)について講義する場合、スポットライトは主要テーマである「うつ病」「精神疾患」に当たります。
このほかにも、例えばこのようなテーマが考えられるかもしれません。
◆事例
「マインドフルネスという考え方では、今この瞬間に集中し、過去や未来にとらわれずに現在を大切にすることが、心の健康に良い影響を与えると考えます」
「自己肯定感を育てることは、健康的な人間関係を築くためにも重要です。自分を大切にすることで、他人も大切にできるのです。」
「プラトンのイデア論では、現実世界のあらゆる物事は、イデアという完璧で永遠な理想の世界の影に過ぎないと考えます。この理論によれば、私たちが見たり触れたりする物は不完全であり、真の知識はイデアを理解することによって得られるのです。」
これはプレゼンの主要テーマが「自己肯定感」「マインドフルネス」「イデア論」である場合のセリフの事例です。
プレゼンの多くの部分が主要テーマにフォーカスを充てることになりますが、
ただ、スポットライト理論では、主要テーマについて話しながらも、
話し手自身のエピソードを話したり、聞き手に質問を投げかけたり、意図的に他の関連するテーマに話を変えたりして、
本来、話し手は言及する対象を自由に切り替えることができる、と考えます。
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関連テーマ(サブテーマ)
上記の「主要テーマ」は、プレゼンの中で言及される割合が最も高いものですが、
その周辺分野や関連するテーマの話をして、話の全体像を伝えたり、さらに深いテーマについて話したいときもあると思います。
その場合、主要テーマと繋がりがある「関連テーマ」に話を切り替えます。
例えば、主要テーマが「うつ病」である場合、「現代社会」について話したいこともあるでしょう。
現代社会は、とても高ストレスの環境で、どんな人でもうつ病を経験する可能性があります。
このように、主要テーマさらに別の角度から掘り下げたいときには、「関連テーマ」にスポットライトを切り替えます。
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環境・状況
プレゼンの場面や背景、使用するツールなどもスポットライトの対象になります。
例えば、学校の教室、大学のゼミの部屋、企業の会議室、オンラインのミーティングルーム、セミナー会場などは、その代表的な事例です。
時には、こうしたプレゼンが行われる環境やその状況に言及することが必要になります。
以下は、その代表的な事例です。
このセミナー会場には、ありがたいことに100名以上の参加者が集まっています
またほかにも、例えば、Zoomのミーティングルームのようなオンラインの環境で、受講生数名に向けて、
コーチング、カウンセリング、ヒーリングなどのサービスを提供しているとします。
このような環境では、リアル会場よりも、参加者のプライバシーが保たれやすい場合があります。
そこで、このような具体的な言及が考えられます。
◆事例
今回のセミナーは、オンラインの環境ですので、皆さんがクリアしたい課題の内容が他の受講生に聞こえてしまう心配はありません。ぜひ皆さんが一番解決したい問題にフォーカスして、ワークに取り組みましょう。
これは周囲の環境に焦点を当てた言及です。
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パターンを増やす
プレゼンの構造が理解できたら、今度は「パターンを増やすこと」を目標にします。
話せる内容のパターンが増えると、話し方の自由度が増していきます。
人前で話すことが苦手だと感じる方は、まずこの「パターン」を持つことを意識するのがおすすめです。
ここでいう「パターン」を増やすことは、「銃のイメージ」で捉えると分かりやすいかもしれません。
プレゼンにおける言語化のプロセスは、「銃に弾丸(弾薬)を込め、目標に狙いを定め、トリガーをひく」一連の動作に喩えることができるのですが、
弾丸(弾薬)が込められていなければ、トリガーを引いても銃を撃つことができませんよね。
人前で話すときも同様で、「型(パターン)=大量の弾丸」が欠けていると、スムーズに話すことができないのです。
裏返せば、あなたのオリジナルの「話し方のパターン=大量の弾丸」を作成し、練習を繰り返すと、プレゼンを一気に上達することができます。
先ほど、「話し手」「聞き手」「主要テーマ」「関連テーマ」「周囲の環境・状況」の5種類の対象を紹介しましたが、この各対象について言及するパターンを作成してみて下さい。
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スポットライト理論のメリット
スポットライトの考え方を持つことで、幾つか大きなメリットが得られます。
これまでにお伝えした部分を含め、3種類挙げてみます。
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メリット①プレゼンの構成を理解する
スポットライト理論を理解することで、プレゼンテーションの構成を明確に把握することができます。
これにより、プレゼンの全体像の把握ができ、見通しがつきやすくなります。
メリット②話し方のパターンを増やせる
プレゼンの構成を、光が当たる場所の切り替えによって把握することで、それをもとにさまざまな話し方のパターンを身につけることができます。
使用できるパターンが増えるほど、それに応じて人前で話す能力が高まっていきます。
メリット③話し方の自由度が高まる
スポットライトのイメージを持つ最大のメリットは、少し抽象的な表現なのですが、
「話し方の自由度」が高められることです。
これはメリット①と②の結果として得られる、最も大事な要素です。
プレゼンで言及できる対象を分類し、その話し方のパターンが増えるほど、自由度が高まっていきます。
この自由度が高まることで、プレゼンの質や内容をより魅力的なものにすることができます。
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まとめ
今回の話のまとめです。
・プレゼン中のあらゆる言葉・文章(テキスト)には、メインとなる対象があり、それは光が当たるイメージによって捉えられる。
・スポットライトが当たる対象は、大きく3~5種類ほどに分けられる
・各対象ごとに、パターンを増やすことで、プレゼンのスキルを高められる
スポットライト理論を活用することで、プレゼンテーションの各場面で自由度の高い話し方ができるようになります。
少しでもご参考になれば嬉しいです。
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