人前でスピーチやプレゼンを行うとき、呼吸が浅くなってうまく話せなかったり、息が続かずに苦しくなってしまうことがあると思います。
このような場合は、まず直接的なアプローチとして、次のような対策を打つのがおすすめです。
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対策①発声の持続時間をチェック
対策②横隔膜を動かすトレーニング
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呼吸が浅くなってしまうときの対策はいろいろなものが考えられますが、今回は最も直接的な身体的アプローチに取り組んでいきます。
※その他のアプローチは、別の記事でご紹介します。
この2つの対策を順番に確認していきましょう。
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対策①呼吸の深さをチェックする
ネットで調べてみると、ヨガをはじめとして様々な種類の「呼吸法」が出てくると思います。
もちろんこうした個々の方法を試してみたり、練習を継続することも大事なのですが、
本格的に呼吸を深めるためのトレーニングに取り組む際に、必ず取り組んでおきたいことがあります。
それは、現在の自分(あなた)の「呼吸の深さ」を確認することです。
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日常的に、呼吸が深い状態を維持するには、
まず呼吸に対して明確な基準(ボーダーライン)を設定し、自分の呼吸の深さを常に客観的にチェックできるようにすること
この考え方がとても重要です。
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というのは、もし呼吸の深さを測る明確な基準を持っていれば、
①今自分がどれくらい深く呼吸できているかが分かり、
②どれくらいの練習量や負荷(強度)が適切か判断でき、自由に調整できる
この重要なポイントを押さえられるからです。
こちらの記事で詳しくお話しているので、一緒に読んでみて下さい。
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では、現在の自分の呼吸の深さをチェックするための具体的な方法なのですが、
ロングトーン・チェックという発声のトレーニングを行うのがおすすめです。
これはボイトレでよく使われ、呼吸・発声の安定性や持続性を確認するものですが、プレゼンの練習でも役立ちます。
ロングトーン・チェックのやり方は、非常にシンプルです。
◆ワークのやり方
ステップ①ストップウォッチを用意して下さい。
ステップ②できる限り長く「あ~~~~~」という発声を維持してみてください。
このワークに取り組んでみて下さい。
何秒ほど、発声を続けられたでしょうか?
以下のスライドに秒数の目安を記載したので、チェックしてみて下さい。
◆ロングトーンの持続時間の目安
以下では、秒数の目安を確認していきます。
※この目安は、初めてロングトーンの練習に取り組む初心者の方向けのものになります。
◆持続時間➡5~10秒ほど
ロングトーンが10秒ほど持続する場合、日常会話では特に困らないかもしれません。
ただ、プレゼンでは、複数の人々の前で話す状況に置かれ、いつもより息が上がりやすくなるので、この時間では少し心もとないです。
※練習の時の持続時間は、本番では半減する(50%)と考えるのがおすすめです。
そのため、これからさらにプレゼンの上達を目指したい方は、ロングトーン10秒前後は「少し呼吸が浅い」と判断するのがおすすめです。
ちなみに、私の場合は呼吸法の練習をサボると、すぐこれくらい浅くなってしまいます。
◆持続時間➡10~15秒ほど
10~15秒は、プレゼン上達のために呼吸の練習を始める場合、スタート地点になる数字です。
10秒以下から始めた場合は、以下でお伝えするように身体の柔軟性と横隔膜の動きを意識しながら、15秒維持できるように練習をしてみて下さい。
◆持続時間➡15~20秒
10秒ほどの時よりもほんの少し呼吸が深まっています。
10秒以下からスタートした場合、「15秒」はまず最初に突破したい目安です。
※その後、20秒に近付けていきますが、平均して20秒以上持続できれば、スタート
の「10秒」よりも2倍の余裕ができているので、プレゼンの練習をするときも少しだけ話しやすくなっているのが実感できるかと思います。
◆持続時間➡20~30秒
呼吸が少しずつ深まってきています。
平均して20秒以上が当たり前になったら、徐々に難易度が上がりますが、25~30秒まで持続することを目指します。
◆持続時間➡30~40秒
ある程度呼吸が深まり始め、持続時間が長くなっています。
30秒以上は、プレゼンを行ううえで一先ず安心できる持続時間のラインであるといえます。
また実際に、プレゼン中に喋ることができる文章(テキスト)のボリュームが明らかに増えるので、だいぶ話しやすくなります。
このロングトーン・チェックを行って、まずはあなたの現在の呼吸の深さを確認してみて下さい。
もしかすると、持続時間が「10秒以下」などになってしまい、「自分は呼吸が浅いな…」と感じてしまうことがあるかもしれません。
このような場合、この方法で出る数字は、飽くまでも「スタートライン」に過ぎず、これから少しずつ伸ばしていけばいいものだと捉えてみて下さい。
「呼吸が浅いからダメ」なのではなく、現在の呼吸の深さが十分ではない、ということを自分で測れたことが大事ではないかと思います。
現在の具体的な数字を把握できたら、ロングトーンを続けてできる限り持続時間を増やすようにしてみて下さい。
私もこのトレーニングは、継続的に取り組むようにしています。
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ここまでで呼吸や発声の大まかな平均の持続時間を把握できたら、
今度は、呼吸を深めるためのトレーニングに取り組んでいきます。
ここでは、横隔膜を動かすトレーニングをご紹介します。
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横隔膜のトレーニング
もし普段の生活のなかで、あるいはプレゼンを実践するとき、「呼吸が浅い」と感じた時は、まずあなたの横隔膜に注目してみて下さい。
横隔膜は、呼吸筋の代表格といわれています。
私たちの呼吸の深さに密接に関係しているため、横隔膜がかたまり、動きが鈍っていると、呼吸が浅くなってしまいます。
ところが、横隔膜は感覚神経がないため、普段の生活の中でその存在感や動きをハッキリ感じることが少し難しいところがあります。
プレゼンのとき、「全然息が続かないな…」と感じたときは、まず「横隔膜があまり動いていないのでは?」と考えるようにしてみて下さい。
そのうえで、横隔膜の位置と形を確認したうえで、かたくなった横隔膜をほぐし、よく動くようにトレーニングをしていきます。
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横隔膜は、こちらのスライドに書かれているように、胸腔と腹腔の境界に位置します。
※横隔膜の位置と形
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横隔膜は、ドーム状の形、傘のような形をしていることで有名ですが、
身体の前方から見た場合、高さ的には、大体「みぞおち~肋骨の下のハの字にカーブしている部分」に横隔膜は位置しています。
横隔膜の位置と形をイメージできたら、以下のトレーニングを行ってみて下さい。
◆横隔膜を動かすトレーニング
ステップ1.横隔膜の位置を確認し、ドームの形をイメージして下さい。
ステップ2.お腹を膨らせる&凹ませる運動を何度も繰り返し、徐々に肋骨の下部やみぞおちの辺りまで意識を向け、横隔膜を刺激して動かして下さい。
こちらの記事で、横隔膜を動かし、機能を取り戻すシンプルなトレーニングをご紹介しています。
スピーチで息が続かない悩みを解決する方法【横隔膜トレーニング】
先ほどお伝えした通り、「横隔膜は動きを意識しにくい」ところがあります。
そのため、このようにお腹の動きを借りながら、少しずつ「横隔膜のイメージ」をできるようにすることが重要です。
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補足:
プレゼンの時「息が続かない」という悩みがある場合、呼吸が浅くなっている、という可能性ももちろんあるのですが、他にも色々な原因が考えられます。
例えば、無意識にいつも「喉が締まる」話し方をしてしまい、すぐに息苦しくなる、という悩みをお持ちの方もいるかもしれません。
この場合、喉を締めない話し方を練習する必要があるのですが、こちらの記事で効果的なストレッチを2種類ご紹介しているので、併せて読んでみて下さい。
→人前で話すとき、「喉が締まって息苦しくなる」問題を解決する方法
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最後に
以前、私はどうしても呼吸が長く続けられずに困っていたことがあるのですが、
今回ご紹介したような方法で少しずつ改善できた実感があります。
少しでもご参考になれば嬉しいです。
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