スピーチ中の「注意リソース」には限りがある

プレゼンの考え方

 

こんにちは、馬渕です。

 

あなたはこれまでに、スピーチやプレゼンの途中で緊張して頭の中が真っ白になったり、適切な言葉が思い浮かばずに困った、という経験をお持ちでしょうか?

 

スピーチやプレゼンに関して、私が常々感じていることがあります。

 

それは、人前でスピーチ・プレゼンを行う時には、意識(注意・集中)を配ることができる量・範囲は極めて限られている、ということです。

 

私たちが持っている、一度に注意・集中できる範囲=水が入ったコップとしてイメージしてみると、水を注ぐことができる量・範囲には限界がある訳ですね。

 

スピーチ・プレゼンは、家族・友人との日常会話などとは少し異なる特殊な状況であるため、

 

この「意識の配り方や、注意力・集中力をどのように管理・運用するか?」というのは大事なテーマではないでしょうか。

 

スピーチ・プレゼン中の「注意リソース」とは?

 

 

心理学では、人が何かに意識を向けるときに脳が使うエネルギーのことを認知資源(認知リソース)と呼ぶことがあります。

 

そして、人間が外部の環境を認識するときにはっきりと意識・把握できる範囲のことを注意容量といいます。

 

どちらも、私たちの注意力や集中力、あるいは意識を向けられる範囲には限りがあるというニュアンスを含む概念ですね。

 

スピーチ・プレゼンは特殊な状況下で、この「注意・集中力・意識できる範囲」はさらに限定されるため、

 

人前で話す機会が多い人ほど、「自分の意識(注意・集中)をどこに向けるか?」という問題について考えてみることは大事なことだと思います。

 

ここでは、スピーチやプレゼン中に配ることができる注意(意識・集中)の量のことを「注意リソース」と呼ぶことにしたいと思います。

 

コップに入った一杯の水=注意リソースです。

 

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全く自慢になりませんが、私は感覚過敏の傾向がとても強く、プレゼン中の注意リソース=コップの水がすぐになくなってしまいます。

 

そのため、頻繁に、途中で自分が何を話していたか分からなくなってしまったり、話し終わるとぐったりと疲れてしまいます。

 

この「注意リソース」をどのように管理すればよいか、整理して考えてみましょう。

 

スピーチ中の「注意リソース」はどこに向けられるか?

 

スピーチ・プレゼン中に注意リソースを向ける先は、大きく分けると4つに分類できると思います。

 

意識(注意・集中)が配られる主な対象

①スピーチの内容・展開、進行

②自分自身の状態

③スピーチを聞いてくれている人々の様子

④周囲のモノ・環境

 

①スピーチの言葉・内容、プレゼンの展開など

 

まず最初は、やはり「何をどんな表現で話すか?」というスピーチの言葉や内容です。

そして、話を続けながら、次の展開のことも考える必要があります。

 

②自分の状態

 

普段のリラックスした時と異なる状況に置かれると、私たちはかなり多くの注意を自分自身に向けると言えると思います。

 

例えば、緊張する状態になると、「緊張してきたな…」「上手に話せるだろうか?」などと不安を感じ、その対処に注意リソースが向けられるでしょう。

 

自分自身への注意は、次の2つに分類できると思います。

精神的な状態(緊張、不安、恐れなど)

身体的な状態(体調、声・喉の調子など)

 

 

③スピーチを聴いてくれている人々の様子

眼の前にいる自分のスピーチ・プレゼンを聴いてくれる人々の様子にも、注意リソースを向ける必要がありますね。

 

例えば、プレゼン内容に関する質問を受けるときなどは、それに答えることに多くの注意リソースが費やされます。

 

④周囲のモノ・環境

 

最後が、人前で話すときの周囲の環境です。

 

プレゼン資料を使う場合は、表示したスライドを見る必要がありますし、オンラインであれば、Zoomの操作などがこれに当たるでしょう。

 

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コップの水=注意リソースを注ぐ対象は、少なくとも4種類程あると考えられます。

 

しかし、注意リソースには限りがあるため、すべて同時に対処することはなかなか難しいかもしれません。

 

また、体調が悪かったり、アクシデントが起こると、すぐに枯渇してしまう可能性もあります。

 

コップの水の量=注意リソースを温存する

 

そうすると、問題となるのは「注意リソースをどれだけ確保・温存できるか?」ということだと思います。

 

注意リソースを効率的に使うために、話し手がまずコントロールできるようにしたいのは、先ほどの4つのうち①スピーチの言葉・内容です。

 

スピーチの練習を重ねることで、「どんな言葉・表現を用いるか?」ということを考えるために、注意リソースを使う割合を減らすことができます。

 

スピーチで用いる言葉・表現を意識せず話すことができれば、他の人々の様子や周囲の状況にも対応がしやすくなると思います。

 

・・・

 

「システム2」から「システム1」へ

 

人間の脳の処理様式には、「システム1」「システム2」という2つのモードがあると言われています。

 

システム1は、自動的・無意識的に行われる「速い・即座の」思考モードです。

 

システム2は、制御的・意識的に行われる「遅い・ゆっくりとした」思考モードです。

 

初めて挑戦するスポーツなどの身体の動きは、意識して制御する必要があるため、主にシステム2が使われますが、

 

練習を続けて慣れてくると、自動的・無意識的にできるようになり、主にシステム1のモードが使われるようになります。

 

日常生活で毎日行う歯磨きや箸の動かし方に関しては、ほぼ意識せずに自動的にできるため、システム1のモードで行っています。

 

また例えば、私たちは①自動車を運転しながら、②助手席に座る家族や友人と話すことを簡単にでき、難しく感じることはないでしょう。

 

これは、ある程度システム1のモードが、「運転すること」を担っているからだと言えます。

 

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スピーチ・プレゼン中の注意リソースを十分に確保するためには、「スピーチ中に話す言葉・内容」をできる限りシステム1で済ませる必要があります。

 

というのも、スピーチで使う言葉・表現の殆どをシステム1で処理できなければ、

「言葉が出てこない…」「なんて言えばいいだろう…」と思考することに注意リソースの殆どを費やす状態になってしまうからです。

 

理想的には、システム1のモードでスピーチ中の言葉・表現を問題なく進行できれば、同時に周囲の環境や他の人々の様子に気を配ることが容易になります。

 

システム1による、スピーチの自動化の精度を高めることが、余裕を持ってスピーチ・プレゼンを進めるためにとても大事ではないでしょうか。

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